ケータイでmixiを閲覧されている方ならご存じかと思いますが、ケータイ専用コンテンツとして「ピコミク」というflashゲームが用意されております。
flashなのでケータイの方向キーが使えず、数字キーを使って入力することになるため、移動しながら何かをする、というタイプのゲームには向かない傾向にあります。
そんなこともあってか、最近ラインナップに追加されるゲームで増えているのが、決定キーのみを使うワンキーゲームです。
ボタンが1個しか使えないので、操作は非常にシンプル。WiiやDSの台頭で、特にシンプルなゲームが見直されつつありますが、ここに来てその影響が加速したということも出来るかもしれません。
そんなピコミクのワンキーゲームにスポットを当て、ゲームのおもしろさとその源について、大いに語り尽くすつもりでおります。
以下、文体が変わります。またかなりの長文になりますので心してお読みください。
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1.初期の傑作「メタボリックマン」
3列に走る列車の上を飛び移りつつ、食べ物を食べたパワーで敵を倒して進むゲーム。
ボタンで上>中>下>中>上>中…と列車を飛び移る。
時折食べ物と敵が同時に出現する。食べ物を取ると点数加算と共に1段階太り、敵に触れると点数加算と共に1段階やせる。
ステージの最後にはボスが出現する。ボスはランダムに移動しながらビームで攻撃してくる。時折ボスが弱るので、ボスと同じ列に移動するとゲージが表示され、攻撃態勢に入る。ボタンを押すと、ゲージの量に応じた強さで攻撃を行う。
ボスに一定量ダメージを与えるとステージクリア。
もっとも太った状態で食べ物を取る、もっともやせた状態で敵に触れる、列車の切れ目に移動する、ボスの攻撃を受けると1ミスとなる。
横スクロールのスピード感の中で敵と食べ物を見分けつつ進み、どの食べ物を取るかの選択など、意外に深い要素を持つ。
食べ物により点数が異なるのだが、それ以上に興味深いのは、やせているときほど得られる点数が高いということ。
食べ物と敵はトレードオフで、最大3つ同時に出現するが、食べ物と敵を同時に得ることは出来ない。
また敵は同時に2体以上は出現せず、食べ物のみが出現することもある。
点数を稼ぐためには、基本的にもっともやせた状態から2番目の状態で進み、敵を倒しては食べ物を取って1段階回復する、というスタイルを取ることになる。
なお、敵を逃さずに5体倒すとコンボになるのだが、食べ物しか出てこない状況は運に任せるしかない上、コンボをつないでもほとんど点数が伸びないため、やせたまま進んだ方が稼げるのは痛いところ。
実はシステム説明にも書いてあることなのだが、条件が隠されているのに役に立たないのはまあ、ご愛敬か。
このゲームのバランスは実に絶妙で、上記トレードオフの選択、列車の谷間をかわすスリルが良く盛り込まれていると言える。
徐々にアップするスピードにあせらされつつも、穴と敵を回避して食べ物を取れただけでも、意外と嬉しいものだ。
惜しいのは、隠しステージのスピードが少々速すぎて反応するには厳しいことと、上記のスコアシステムの不備くらいであり、ゲームとして欠けた点は見あたらない。
ランダム性も、スコア競争するにも適度なバランスを保っているように見える。ケータイの中で遊ぶワンキーゲームとしては、なかなかの秀作と言えるのではないだろうか。
2.過去の遺産を再利用「スペースインベーダー」
タイトーは現状、2作品を発表しており、こちらの方が出来が良いと思われるので先に紹介。
ルールはおなじみスペースインベーダー。全6ステージで打ち切りになっていたり、敵が20匹しか出てこないかわりにシェルターがない、など軽快なアレンジが施されている。
シューティングゲームである本作をワンキーゲームに落とし込む際に、問題となるのは操作系である。元々が2方向レバーと1ボタンという操作系であったのに対し、こちらは常時移動を行い、攻撃と方向転換をボタンを押したときに同時に行うことにしている。
このアレンジと、当時そのままのUFO得点システムを再現したもどかしさ、おもしろさがそのまま詰まった作品といえる。
しかしさすがに、弾を撃つタイミングと移動は別に出来ないものかと感じた。思い通りにならないばかりか、何度もやり直すことが前提のこのシリーズで全6面を、撃った弾数を気にしながら遊ぶのは少々酷と言えるかもしれない。
それでも、やはりアレンジの絶妙さは評価したい。これで移動と攻撃が別になっていたら完璧なのだが、ワンキーゲームでなくなってしまうので、その時点で本評論の対象から外れてしまう…。
3.再利用が裏目「パズルボブル」
恐らく、今回紹介するゲームの中で最低の評価を下さざるを得ないのがこのゲーム。
こちらもすでにゲームの原型があるので説明は不要かと思うが、あまりにも思い切ったアレンジのためか、ゲームのおもしろさがほぼ全て削がれた、残念な作品に仕上がってしまっている。
全5ステージで、はじめから配置されたバブルに対し、次々に用意されるバブルを発射し、3つつなげて消していく。最終的に全てのバブルを消去するのが目的である。ここまでは原作と変わらないのだが…。
1)方向決定は自動で動く矢印をボタンで止めることによって行う。
2)バブルの順番は固定であり、その時点で消える場所に向かって発射しないとミスとなり、残機を1消費する。
3)また画面下にゲージで表示されている制限時間を超過してもミスとなる。
4)ミスすると、経過時間はそのままで、そのステージの最初からやり直しとなる。10ある残機を全て失うとゲームオーバー。
5)点数は、各ステージを10秒以内にクリアすると3000点、それ以後徐々に減点されるタイムボーナスと、ノーミスクリアで得られる5000点のボーナスのみである。
上記のアレンジ全てが、このゲームの魅力を台無しにしてしまっていると言わざるを得ない。
このゲームは「ランダムに選ばれるバブルを」、「どうすれば大量に同時消しが出来るか悩みながら」、「自分で方向を決めて打ち出し」、その結果に一喜一憂するのが楽しいのである。
決して、決められたレールの上をズルズルと流されるように遊ぶゲームでもないし、限界が見えないのも特徴だ。
このゲームは、公開初日から限界点の4万点でスコアボードが埋め尽くされた。
同じ過去遺産のアレンジでも、あまりにも対照的といえる末路に閉口せざるを得ない。
4.意外と良くできた運ゲー「作ってC.C.Lemon」
タイトル通り、C.C.Lemonとのタイアップで生まれたゲームであり、その出来を疑問視しながら遊んでいたのだが、なかなかどうして良くできている。
が、「運」がこのゲームの全てを握ってしまっているバランスにはさすがに苦言を呈したい。
操作は、自動で移動するミキサーを、ボタンを押して方向転換させるもの。
上から降ってくるレモンをミキサーで受け止め、液体を満たしてペットボトルを取ると、ミキサーの中身がドリンクに変換されて右上に蓄積される。
蓄積されたドリンクが一定量満たされると、ドリンクの入れ物が350ml缶、500mlペット、1.5lペットの順で進化し、ミキサーも容量が増える。
稼ぎ要素としては、レモンを逃さずにとり続けると得られるコンボボーナス、ミキサー容量がいっぱいの状態でドリンク変換すると得られるMAXボーナスがある。
このゲームのキモは、間断なく降り注ぐレモンをいかに逃さず、いかに効率よくドリンクに変換していくかを味わうことであり、コンボとMAXが決まるとそれなりの演出と点数表示で、気分が盛り上がる。
ドリンクを完成させるたびに上昇する得点が画面下に大きく表示されると、やはり爽快だ。
絶対に取れない位置にレモンが配されることもあるのだが、これはまあ致し方ないか。
さて、降ってくるレモンには50個という制限がある。
このゲーム最大の問題は、このレモンを増やすアイテム「フィーバーレモン」が、出現する数、その増える数までもが完全にランダムであるということ。
フィーバーレモンには35、50、70の3種類があるのだが、すでにこの数だけ見ても、最初から用意されているレモンの数と釣り合っていない。しかもこのアイテム、最大で3個出現するようなのだが、運が悪いと2個しか出現しないこともある上、増える数も全て35だったり、70が来たりと様々。
このフィーバーレモンの数が大きいかどうかで限界点が決まってしまうため、実力もさながら、運があまりにも大きなウエイトを占めてしまっているのは残念な限りである。
5.高いテンポとスピード感が仇に「Go! Go! Wind’s」
タイトルから想像できないが、これもC.C.Lemonとのタイアップゲームで、mixi上で展開されているケータイ小説との連動企画である。小説の内容はともかく、ゲームの出来は正直残念と言わざるを得ない。
チア大会に出場している主人公が、なぜか空中での連続ジャンプを決め、なぜかレモンを集めて得点を伸ばすことで優勝を目指す内容。正直無理がある。
主人公をジャンプさせる角度をボタンで決定したら、あとは落とさないようにひたすらボタンを連打するしかない。
ゲームスピードが速すぎて、ジャンプのタイミングを考えたり、レモンの出現する位置・順番を把握するヒマすら与えてくれない。
またケータイ特有のゲームスピードの不安定さは、シビアなタイミングを要求されるゲームにはとても不向きと言える。しかしこのゲームのジャンプタイミングは非常にシビアで、頂点から落下しているときにしか連続ジャンプが許されない上、落下スピードがかなり速いので長く連続ジャンプを続けるのは困難。
連打で耐えつつ、レモンが連続でたくさん取れること、レモンを逃してもコンボがつながるフィーバーアイテム、石にぶつかっても落ちなくなる無敵アイテムをたくさん取れることを祈りながら進む。
これは、運任せの連打大会と何が違うのであろうか?
6.シンプルながら演出の豪華さで勝負「ガンダム00 エクシア」
キャラクタータイアップと思って正直馬鹿にしていたが、演出が優れている上にバランスが良く、遊んでいて飽きが来ない良作。
自動で移動するガンダムの位置を確認しつつ、敵戦闘機の出現方向を示すマーカーで位置を予測、出現した敵をタイミング良くボタンで破壊していく、というシンプルな内容である。
しかし3Dで表現された(と思われる)フィールド、敵の出現パターン、微妙にかかったエフェクト、敵の破壊グラフィックなど、演出面で非常に強力なバックアップを受けている。演出次第でここまで面白くなるのか、と驚かざるを得ない。
2機、3機同時破壊の爽快感、コンボがつながってどんどん点数が伸びるワクワク感、予測しづらいが点数が大幅に伸びる援護射撃に当たって欲しい反面、それにより敵が撃墜されて自分の攻撃が外れればコンボが切れ、一気に得られる点数が減るジレンマなど、うまく絡み合っている。
敵の攻撃を避ける部分を思い切ってバッサリと切り落とし、敵を狙うことに集中できるのも良い方向に働いている。
またプレイ時間も適度に短く設定されており、クリア条件である30機を撃墜するまでの時間は1分以下とテンポ良く遊べるので、何度も何度もリトライさせる中毒性すら兼ね備えている。
正直、「何故この攻撃が当たる/当たらないのか」が理解しづらいところは残念ではあるし、5コンボつなぐごとに援護射撃がくるのだが、そのタイミングが分かりづらく敵を斬るところに重なると目も当てられないのはツラいところではある。
それを差し引いてもゲームとしての出来は十分といえるであろう。
総括
例として6作品を挙げたが、点数では測れないおもしろさ、つまらなさが割とはっきりしている傾向にあると感じた。
ゲームの面白さとは、何が元になって生まれているのかを理解した上で、機能や内容を絞り込まないとかならず破綻する。
たとえば対照的な2作品としてあげた「スペースインベーダー」と「パズルボブル」。
スペースインベーダーの方は、撃って避けるおもしろさがそのまま凝縮されているのに対し、パズルボブルの方は、少々高度に考え、悩んで決定を下し、その結果を見て楽しむというおもしろさが全て削がれてしまっている。
スペースインベーダーの方は少々テンポ悪くも感じるが、ゲームのおもしろさとは外れた部分だ。逆にパズルボブルは非常にテンポ良く進むものの、そこが悪かったとして、ゲームそのものの評価は恐らく変わらなかっただろう。
だが、スペースインベーダーで敵を大量に出したりステージを無限にしたりしても、パズルボブルで自由にバブルを撃てるように改良され、考える楽しみを与えたところで、どちらも冗長なゲームととらえられかねない。
逆に、テンポが重要視されるのが「Go! Go! Wind’s」であるが、この場合テンポが良すぎて、またケータイの特性を考えて作られなかったせいで、どこでジャンプするか考える前に、プレイヤーに連打させることを要求するバランスになってしまっている。
また適度なテンポの良さを保って作られた「ガンダム00 エクシア」は、どんなに長くても1分というバランスがあり、またタイミングそのものもあまりシビアにしていないせいか、ランダム性をうまく盛り込んで高いゲーム性を実現している。
・ボタンを押すタイミングはゆるめに
ワンキーということは、ボタンを押すタイミングしかゲームの要素に盛り込めないので、いかにタイミングを取ることを楽しく感じさせるかが全てということになる。
が、ケータイの特性上、機種により速度にばらつきがある上、多くの機種では高いフレームレートを維持するのは不可能である。
タイミングをとる楽しさを維持しつつ、いかにゆるめのバランスで調整するかがカギと言える。
・適度なやり直し欲を
ボタンがひとつであるため、操作をうまくできたことに対する楽しさは感じられず、むしろうまくいったかどうかが感覚と直結している部分がある。また、ワンキーゲームとはタイミングを見るゲームであるがゆえに、神経を尖らせる時間が長い。よって、長時間遊ばせるゲームには不向きである。
1プレイの時間は短く設定し、それでいて何度もやり直し欲をかき立てる工夫をシステムに盛り込む必要があるだろう。
以上でまとめとしたい。